欲を深くして、アルコールに強くなりたいという人向けの遺伝子治療さえ考えられる。
アルコールを分解する酵素群のうち、あるものは飲酒経験によって分泌が増えるが、遺伝子の性質によって決まってしまう要素もある。
体質的に酒の飲めない人は、このアルコール分解酵素に関与している遺伝子が働かない人である。
そこで、たとえば酒豪の人から分解酵素遺伝子をもらって体内に移植すると、アルコールに強い体質に変わる可能性があるのである。
免疫学の分野でよく知られているのが、「ある伝染病やアレルギーに関して、かかりやすい人とかかりにくい人がいて、その要素は遺伝する」という事実だ。
Mさんは伝染病mにかかりやすく、Nさんは伝染病nにかかりやすい。
またPさんはアレルギーのなかでもpになりやすく、Qさんはqになりやすい傾向があるといったことが、ある遺伝子を検査するとわかる。
最近では、ある種のガンにかかりやすい体質かどうかも、調べることができるようになってきた。
これら免疫に関係する遺伝子群は「主要組織適合遺伝子複合体」と呼ばれる遺伝子グループをなしていて、ヒトの場合はHLAと呼ばれ、第6染色体の上にある。
この名前は臓器移植における拒絶反応の研究からきているのだが、HLAのタイプごとにかかりやすい病気の種類までがわかってきている。
いまでは臨床検査として費用さえ払えば、自分のHLAタイプを知ることができるまでになっている。
ということは、HLAの遺伝子群を″望ましいタイプ″と入れ換えて、体質をまったく変えてしまおう、という発想が将来的に出てきてもおかしくない。
おそらく、究極の体質改善と聞いて思い浮かべる人がもっとも多いのは、「頭の良くなる方法」輪だろう。
前述のように老化や痴呆などの研究には、脳内で働いている遺伝子の研究が欠かせない。
神経細胞の老化を抑え、場合によっては神経繊維を再建することで脳障害をクリアするには、これらに関与している物質を作るさまざまな遺伝子を探す必要がある。
そして、これら脳機能に関与する遺伝子がわかれば、老化防止や痴呆の治療だけでなく、もっと積極的に脳の性能を上げることも可能なはずだ。
何をもって「頭が良い」というかは難しいが、たとえば記憶や学習の効果を高めるとか、視力や聴力などの能力を上げて感覚を研ぎ澄ますといったことは、脳の神経細胞ネットワークを強化することで可能だといわれるようになった。
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